大回り乗車の根拠となる規則とは

いわゆる大回り乗車というものがあります。これは大都市近郊区間(東京、大阪、福岡、新潟、仙台)においては、その範囲を出ない限り大回りの経路でも最短区間の運賃で済むというものです。これは大回り乗車という規則があるわけではなく、旅客営業規則の解釈によって成立するものです。

時々、安上がりな旅行としてネットニュースとか何かの記事で取り上げられることがありますが、生半可な知識で挑むと失敗することも多いです。一般的に、短距離(隣駅または近い駅間)のきっぷで、最短経路以外の経路を通っても運賃は最短経路で計算される、ぐらいのことしか説明がないように思われますが、規則上以下のルールを守らなければなりません。これを外れると、実際の乗車経路に沿った運賃を請求されます。

1.大都市近郊区間内の移動であること
2.乗車駅と降車駅は異なること(これは当然ですが)
3.途中の経路が重複しないこと(同一駅を2回以上経由しないこと)

ハッキリ言って鉄道会社(JR)にとって嬉しくない利用法ですので、あまりないとは思いますが駅員によっては説明(乗車経路などについて)を求めてくるかもしれません。自分も昔某駅の駅員に「本来は実際の乗車経路で計算した運賃を支払わなければならないんだ」とか因縁を付けられたこともありますし。ですので、大回りに関する規則を確認しておきたいと思います。本来あるべき乗り方ではないので、もしルールを逸脱した場合はいろいろ言われることも覚悟した方がいいかもしれません。

では、ここから関連の規則を確認していきます。なお、以下は東日本旅客鉄道(JR東日本)の旅客営業規則から引用していますが、他の旅客会社についてもほぼ同じ規則が適用されます。

第67条 旅客運賃・料金は、旅客の実際乗車する経路及び発着の順序によって計算する。
これは基本ですね。

第67条の4 前各項の規定により、旅客運賃・料金を計算する場合で次の各号の1に該当するときは、当該各号に定めるところによって計算する。
(1)計算経路が環状線1周となる場合は、環状線1周となる駅の前後の区間の営業キロ、擬制キロ又は運賃計算キロを打ち切って計算する。
(2)計算経路の一部若しくは全部が復乗となる場合は、折返しとなる駅の前後の区間の営業キロ、擬制キロ又は運賃計算キロを打ち切って計算する。
1周して発駅に戻って来た場合、または経路上で1度通過した駅に再度来た場合は、その時点で回ってきた区間の運賃を計算します。そもそも、発駅から移動しない乗車券なんてあり得ないわけですが。また、途中で経路が重複しても、その時点で経路を切って運賃を計算します。よって、ダブったらアウトです。

第157条の2
大都市近郊区間内相互発着の普通乗車券及び普通回数乗車券(併用となるものを含む。)を所持する旅客は、その区間内においては、その乗車券の券面に表示された経路にかかわらず、同区間内の他の経路を選択して乗車することができる。
第157条の3
前項の場合、普通乗車券を所持する旅客が、他の経路を乗車中に途中駅において下車したときは、区間変更として取り扱う。
大都市近郊区間については前条の第156条第2項に定義されていますが、ここでは省略します。これが、実際の乗車経路にかかわらず最短距離で計算する、の根拠です。もちろん、途中で降りたら乗車駅と降車駅の距離で運賃が計算されますので、その分の運賃が必要になります。

今はSuicaなどの交通系ICカードの利用を想定して、途中経路を定めない方式になっていますが、かつては大都市近郊区間内の経路指定が面倒なので、特例として区間内においては途中経路を問わず、最短経路で運賃を計算する扱いにしたのでしょう。とは言え、そもそもSuicaはあくまでプリペイドカードであって(もともとはストアードフェアのイオカードの拡張版でしたよね)、それで電車に乗れるようにしているだけなので、厳密な意味では乗車券ではないです。この話は長くなりそうなのでここでは書きませんが、ICカードエリアでは途中経路をチェックするよりは、発駅~着駅で処理した方が都合がいいということなのでしょう。乗車券の途中経路をガチでチェックしようとすると、車内検札または中間改札を使わなければなりませんが、ルートが複雑な大都市近郊区間ではあまり現実味がありません。最近の車掌さんは一応ICカードリーダーをお持ちですが、発駅と残額しか分からないので経路の判定まではできません。まさか、東京から品川まで移動するのに大宮を経由する人なんてそんなにいないだろう、もしいたとしてもおまけしてやろう、それが大都市近郊区間における特例になっているのでしょう。

いろいろ書きましたけど、大回り乗車はイレギュラーな利用法である、旅客営業規則の裏をかいて実現できることである、ということを心に留めていただければよいかと思います。各大都市近郊区間内における活用法については、次稿でまとめたいと思います。とにかくセンシティブな扱いですので、自信のない方は都区内パス、休日おでかけパス、関西1デイパスなどのご利用をお勧め致します。

羽越本線、花輪線、石巻の旅(JR東日本株主優待券の旅)(おまけ)

JR東日本の株主総会のお知らせが来ました。その前に、次の株主優待券も届きましたけど。そう言えば、この前の旅行で窓口駅員のレベルが低いことについては、議決権行使書に一応書いてやることにしたので(羽越本線、花輪線、石巻の旅(JR東日本株主優待券の旅)(前編)参照)、丁寧に書いておきました。

まあ、ひどかったな。当然あの駅員さんはあの後勉強してくれているものと思いたいけど、事業報告を読んでいると段々不安になってきたので、ちゃんと勉強してもらうために、何が問題だったか考えてみました。

  1. 大宮から東京のきっぷをみどりの窓口で買うか?
    大宮から東京都区内と書かなかったのも悪かったかもしれないが、近距離きっぷを窓口で買うなんて発想は普通ないでしょ?
  2. 仙石線を正しく読めなかった
    仙石線(せんせきせん)が正しく読めなかった。ということは路線の存在すらも知らなかったんでしょう。路線があることを知っていれば変な読み方なんてしないものです。
  3. 常磐線の区間を理解してなかった
    仙台から(正しくは岩沼から)常磐線に入る経路なのに、東北本線経由だと思っていた。仙台~東京のルートが東北本線(新幹線)だけと思っているのは、プロとして大いに問題です。
  4. 常磐線が大宮経由だと思っていた
    常磐線の存在を丁寧に教えてあげたのに、大宮で経路が重なるのでここまでしかきっぷは発行できませんと言われた時には目の前が真っ白になりました。茨城あたりの時空が歪んでいるという報告は受けていません。
  5. 新在並行区間で新幹線駅が在来線上にない場合、その区間だけ別線扱いになることを知らなかった
    長岡~(新幹線)~新潟~新津の経路に対して、経路が重なりますから新潟で切れますねと言われた時は、こちらもキレそうでしたよ。
  6. 通過連絡運輸を理解してなかった。いや、IGR線も知らなかったのでは。
    好摩で経路が切れます、これ以上は進めませんと言ったのは、好摩から先IGR線になるから、その先のJR線につながらないという誤認識によるものでしょう。後で聞くとちゃんと(マルス上に)経路はあったらしいので、単なる認識不足です。

なんで、こんな済んだことを今さら言うのかというと、事業報告書の頭に高輪G駅のイラストがあったので、ちょっと怒りが湧いたというのも理由の一つです。そして、我々が正しく指導してあげないと、旅客会社ではまともに駅員を育成できないのではという危惧を抱いたからでもあります。

さて、今年の旅行はたぶん厳しいと思うので、また来年になりそうです。その時の財政状況にもよるけれど、もし旅行できるのならもっと複雑な経路を考案して、次のターゲットみどりの窓口係員の実力を見せていただくことにしましょうか。