バス特の思い出(続)

かつて関東のバス事業者(東京、神奈川、千葉、埼玉)には、バス特(バス利用特典サービス)というものがありました。これは、ICカード乗車券(PASMO、Suica)の利用を促進するため、既存の共通バスカードを廃止し、無期限だった利用額割引を1ヶ月というスパンで区切るという改悪でした。

そのバスカードから見て改悪であるバス特さえも、2021年4月を持って廃止されてしまいました。それ以降は、ICカード乗車券を使ってもプレミアが付くことはなくなりました。ただ、現金利用に比べて1円単位でいくらか安くなるというわずかなメリットは残されました。

ですが、それも多区間料金方式では威力を発揮するものの、東京、横浜といった1円単位の端数が0のエリアでは何の意味もないことが判明しました。東京都区内(都バスエリア)と川崎市内エリアは210円、東京都区内(都バス以外)と横浜市内エリアは220円ですね。210円区間なら小児運賃は105円となり、わずかにメリットが残されますが、220円区間では小児運賃も110円。もはやICカード利用によるお得感はどこかへ消え失せてしまいました。

さらに、最近のバスを見ていると前面に奇妙な横断幕を付けていますね。「のりかえよう、モバイルへ」あのー、寝言は寝てから言ってくれませんかね?ただでさえ、ICカードのメリットがなくなったのに、今度はモバイルSuica、PASMOにしろと。そうですよね、そうすればカードを発行する手間も省けますもんね。ICカードを発行する際にはデポジットという保証金を500円ほど分捕り、カードを返却すると返ってくるらしいのですが、それすら惜しんでBYODをゴリ押しするのか。このバス事業者どもの愚行に自分はかなり怒りを覚えました。そして、決意しました。そうだ、もう現金払いにしよう!

折しも、各金融機関(ゆうちょ銀行までも)が小銭の取扱いに余計な手数料を徴収するようになりました。それもあって、キャッシュレス、ICカード利用促進を進めたいのでしょうが、利用者にメリットが全くないキャッシュレス、引いてはBYOD的なモバイルIC乗車券の押し付け。確かにバス事業者も利用者の減少でお財布は苦しいのでしょうが、それを公言せずあくまでIC乗車券、モバイルIC乗車券をゴリ押しするという不誠実な対応には納得行かないのは誰もが認めるところでしょう。ですので、今後は(既に実行していますが)IC乗車券と現金の差分がない区間では小銭を支払うことにしました。それが彼らの望む世界なのではないでしょうか。もし、本当にIC乗車券、モバイル乗車券を普及させたいのなら、バス特のような制度を維持するべきでしょう。

幸い小銭は、ジュースの自販機などで簡単に補給できるので、わざわざ銀行で高い手数料を払って両替する必要もありません。そういう地道な運動により、バス特を復活させたい。そんな切なる想いを大事にして、今日も運賃箱に小銭を投入するのでした。

大回り乗車補足

JRの大都市近郊区間における大回り乗車について書いてきましたが、旅客営業規則に記載されている大都市近郊区間を見てみると世間で認識されている路線名と違う記載があることに気が付きませんか?

ここで旅客営業規則第156条を確認してみましょう。
第156条
旅客は、旅行開始後、その所持する乗車券によって、その券面に表示された発着区間内の着駅(旅客運賃が同額のため2駅以上を共通の着駅とした乗車券については、最終着駅)以外の駅に下車して出場した後、再び列車に乗り継いで旅行することができる。ただし、次の各号に定める駅を除く。

実は途中下車に関する規定の条文なのですが、ここに大都市近郊区間の記載があります。途中下車については今回は無関係なので省略します。いろいろ思い出というか遺恨はありますけど。

(2)次に掲げる区間(以下「大都市近郊区間」という。)内の駅相互発着の普通乗車券を使用する場合は、その区間内の駅
イ 東京附近にあっては、東海道本線中東京・熱海間(第16条の2の規定にかかわらず、東海道本線(新幹線)東京・熱海間を除く。)及び品川・新川崎・鶴見・羽沢横浜国大間、山手線、赤羽線、南武線、鶴見線、武蔵野線、横浜線、根岸線、横須賀線、相模線、伊東線、中央本線中東京・塩尻間及び岡谷・辰野・塩尻間、青梅線、五日市線、八高線、小海線中小淵沢・野辺山間、篠ノ井線中塩尻・松本間、東北本線中東京・黒磯間(第16条の2の規定にかかわらず、東北本線(新幹線)東京・那須塩原間を除く。)、日暮里・尾久・赤羽間及び赤羽・武蔵浦和・大宮間、常磐線中日暮里・浪江間、川越線、高崎線(第16条の2の規定にかかわらず、高崎線(新幹線)大宮・高崎間を除く。)、上越線中高崎・水上間、吾妻線、両毛線、水戸線、日光線、烏山線、水郡線中水戸・常陸大子間及び上菅谷・常陸太田間、信越本線中高崎・横川間、総武本線、京葉線、外房線、内房線、成田線、鹿島線、久留里線及び東金線(以下これらの区間を「東京近郊区間」という。)

なんか見たことがない記載が多いぞ?品川・新川崎・鶴見・羽沢横浜国大間?赤羽線?という疑問が起こるのはごもっとも。今のJR東日本はそんな案内は出してません。案内看板にそんな書いてあるのを見たことがありませんよね。実は路線の正式名称なのです。品川・新川崎・鶴見というのは横須賀線(湘南新宿ライン)の一部、鶴見・羽沢横浜国大というのは埼京線・相鉄直通線の一部?、赤羽線は埼京線の一部(池袋~赤羽間)、日暮里・尾久・赤羽は上野東京ラインの一部、赤羽・武蔵浦和・大宮間は埼京線の一部なのです。なお、東海道新幹線(東京~熱海間)、東北新幹線(東京~那須塩原間)、上越新幹線(大宮~高崎間)は含まれないことも明記されています。

ロ 大阪附近にあっては、東海道本線中米原・神戸間(第16条の2の規定にかかわらず、東海道本線(新幹線)新大阪・新神戸間を除く。)、山陽本線中神戸・相生間(第16条の2の規定にかかわらず、山陽本線(新幹線)新神戸・西明石間を除く。)及び兵庫・和田岬間、湖西線、おおさか東線、大阪環状線、桜島線、JR東西線、福知山線中尼崎・谷川間、北陸本線中米原・近江塩津間、加古川線、赤穂線中相生・播州赤穂間、山陰本線中京都・園部間、関西本線中柘植・JR難波間、草津線、奈良線、桜井線、片町線、和歌山線、阪和線及び関西空港線(以下これらの区間を「大阪近郊区間」という。)

説明が要りそうなところだけ書いておくと、桜島線=JRゆめ咲線、片町線=学研都市線、関西本線柘植・JR難波間(加茂~JR難波間は大和路線)ぐらいでしょうか。なお、山陽新幹線の新大阪~西明石間は含まれません。ということは、東海道新幹線の米原~新大阪間と山陽新幹線の西明石~相生間はなんと含まれるのです!最短きっぷで新幹線の改札に突っ込むと駅員とケンカになりそうですけど。

ハ 福岡附近にあっては、鹿児島本線中門司港・鳥栖間(鹿児島本線(新幹線)小倉・博多間を除く。)、香椎線、篠栗線、日豊本線中小倉・行橋間、日田彦山線中城野・今山間、筑豊本線、後藤寺線及び博多南線(以下これらの区間を「福岡近郊区間」という。)

山陽新幹線小倉~博多間はJR西日本の管轄ですので、当然含まれません。でも、西日本管轄の博多南線はOKなのか?よく分からないです。また、筑肥線は含まれません。まあ、福岡市内駅からもハブられてるぐらいですから、仕方ないですね。蛇足ですが、香椎線=海の中道線(西戸崎~香椎間)を含む、筑豊本線=若松線&福北ゆたか線(折尾~桂川間)&原田線、篠栗線=福北ゆたか線の一部(桂川~吉塚間)です。

ニ 新潟附近にあっては、上越線中小千谷・宮内間、磐越西線中五泉・新津間、羽越本線中新津・村上間、白新線、信越本線中直江津・新潟間(第16条の2の規定にかかわらず、信越本線(新幹線)長岡・新潟間を除く。)、越後線及び弥彦線(以下これらの区間を「新潟近郊区間」という。)

特に説明するところもなさそうですが、上越新幹線の長岡~新潟間が含まれない事だけは書いておきます。

ホ 仙台附近にあっては、東北本線中矢吹・平泉間(第16条の2の規定にかかわらず、東北本線(新幹線)郡山・一ノ関間を除く。)、岩切・利府間及び松島・高城町間、常磐線中小高・岩沼間、仙山線、仙石線、石巻線、磐越東線中船引・郡山間、磐越西線中郡山・喜多方間、奥羽本線中福島・新庄間(奥羽本線福島・新庄間に運転する特別急行列車に乗車する場合を除く。)、左沢線及び陸羽東線(以下これらの区間を「仙台近郊区間」という。)

東北新幹線郡山~一ノ関間は含まれません。それと東北本線松島・高城町間?そんなところに線路あったっけ?路線図上には出てきませんが、実際には存在します。東北本線松島、仙石線高城町の手前(仙台方)に架線の途絶えた謎の連絡線があります。それが松島・高城町間というわけです。よーするに、仙石東北ラインのことですね!それと福島・新庄間(福島・新庄間に運転する特別急行列車に乗車する場合を除く)というややこしい表現はいったい何なんだ?結論を言えば、山形新幹線(つばさ号)は含まれないという意味です。面倒ですが、一応書いておくと第3条に用語の定義があり、そこで新幹線の定義もされているのです。

第3条 この規則におけるおもな用語の意義は、次のとおりとする。
(中略)
(1)の6 「新幹線」とは、東海道本線(新幹線)、山陽本線(新幹線)、鹿児島本線(新幹線)、東北本線(新幹線)、東北新幹線、高崎線(新幹線)、上越線(新幹線)、信越本線(新幹線)、北陸新幹線、九州新幹線及び北海道新幹線をいう。

えーと、何を書いているのか分からないという方のために説明すると、フル規格の新幹線以外は新幹線として認めねえ!と書いています。よって、山形新幹線、秋田新幹線といったいわゆるミニ新幹線は在来線扱いです。九州新幹線の武雄温泉~長崎間(建設中)はフル規格なので新幹線になることでしょう。それと蛇足ですが、ゆうゆうあぶくまライン=磐越東線、山形線=奥羽本線の一部(福島~新庄間)です。

また、乗車経路の扱いについてですが、列車の運行パターン(停車パターン)によって、一部区間外乗車が認められている箇所があります。おそらく大回り乗車でも準用されるのではないかと。

1.松島または愛宕以遠(品井沼方面)の各駅と高城町以遠(松島海岸または手樽方面)の各駅との相互間[塩釜~松島]
松島方面から仙石東北ラインに乗るために塩釜で折り返していいよという扱いです。その逆も可能です(以下同じ)。

2.西日暮里以遠の各駅と三河島以遠の各駅との相互間[日暮里~東京]
常磐快速線から上野東京ラインに乗るために東京まで行っていいよという扱いです。上野ではなく東京なのは、新幹線を想定しているのでしょう。

3.日暮里、鶯谷または西日暮里以遠及び三河島以遠の各駅と尾久駅との相互間[日暮里~上野、鶯谷~上野]
上野東京ライン尾久から山手線、京浜東北線(鶯谷方面)または常磐線(日暮里方面)まで行くのに上野で折り返していいよという扱いです。

4.西大井以遠(武蔵小杉方面)の各駅と品川以遠(高輪ゲートウェイ方面)の各駅との相互間[品川~大崎]
湘南新宿ラインから山手線(品川以遠)に行くのに、大崎折返しでもいいよという扱いです。てか、横須賀線乗れよ。

5.横浜以遠(保土ケ谷または桜木町方面)の各駅と羽沢横浜国大駅との各駅相互間[鶴見~武蔵小杉]
相鉄直通列車は配線の都合で武蔵小杉からしか乗れません。なので、東海道本線、横須賀線の保土ケ谷、戸塚方面、あと根岸線からの利用時に鶴見~武蔵小杉の折返しを認めてやろうということです。鶴見は上述の通り品鶴線の終点ですので、本来はそこで折り返さないといけないのですが、いかんせん電車が停まらないので。

6.新川崎駅と羽沢横浜国大駅間との各駅相互間[新川崎~武蔵小杉]
相鉄直通列車は配線の都合で新川崎に停まれません(真横にある新鶴見信号場を通過します)。なので、新川崎から武蔵小杉までの折返しを認めてやろうということです。この相鉄直通線は特殊なルートを通るのでやむを得ないところでしょう。

7.鶴見、新子安、東神奈川または川崎以遠(蒲田または尻手方面)、国道以遠(鶴見小野方面)もしくは大口以遠(菊名方面)の各駅と羽沢横浜国大駅との各駅相互間[鶴見~横浜、新子安~横浜、東神奈川~横浜、鶴見~武蔵小杉]
これも相鉄直通列車の特異性によるものです。京浜東北線、鶴見線、横浜線から横浜経由横須賀線または湘南新宿ラインで武蔵小杉まで行っていいよという扱いですね。

8.鶴見、新子安、東神奈川または川崎以遠(蒲田または尻手方面)、国道以遠(鶴見小野方面)もしくは大口以遠(菊名方面)の各駅と、新川崎、西大井または武蔵小杉以遠(武蔵中原または向河原方面)の各駅との相互間[鶴見~横浜、新子安~横浜、東神奈川~横浜]
品鶴線の終点は鶴見ですが、そんなところに横須賀線、湘南新宿ラインの電車は停まらないので、横浜で折り返していいよという扱いです。京浜東北線の鶴見~東神奈川間から横浜へ折り返して横須賀線(湘南新宿ライン)の品川・大崎方面に乗れます。

9.武蔵白石または浜川崎以遠(小田栄または昭和方面)の各駅と大川駅との相互間[武蔵白石~安善]
もともと鶴見線の大川支線は武蔵白石から発着していました。それが武蔵白石のホームが廃止され、大川行きは鶴見発着となりました。そのため、浜川崎方面から乗車する場合は、安善まで行ってから折り返すことが認められるようになりました。

10.今宮または芦原橋以遠(大正方面)の各駅とJR難波駅との相互間[今宮~新今宮]
大阪環状線の芦原橋以遠(大正方面)からJR難波に向かう場合に新今宮まで行って折り返していいよという扱いです。今宮駅は昔は大和路線にしかなく大阪環状線はその外側を通過していましたが、今は大阪環状線にも今宮駅ができました。ですが、今でも快速は今宮を通過するので必要なんですかね?

11.折尾以遠(水巻方面)の各駅と東水巻以遠の各駅との相互間[折尾~黒崎]
*ただし、鹿児島本線と筑豊線を直通する列車に乗車する場合に限ります。
地元民ならすぐ分かると思いますけど、鹿児島本線の門司港、小倉、黒崎発着の福北ゆたか線直通列車というのがあります。この列車は、配線の都合で折尾駅では他ののりばから離れた場所を経由します。なので、博多方面から黒崎まで戻ってその直通列車に乗っていいよという意味です。折尾~陣原でもいいのでは?いや、昔は陣原駅はなかったのでその名残でしょう。

繰り返しになりますが、巷のネット記事などでは大回り乗車についてあまりに簡単に書きすぎているように思います。実際にはここまで述べたような複雑なルールを理解した上でないと実行することはできません。青春18きっぷなら、間違えて特急に乗ったらその分の運賃を支払えばいいですが、大回り乗車についてはリスクが大きいように思います。しっかりルールを理解して楽しんでいただければと思います。

大回り乗車実践編

大都市近郊区間は、初めに東京、大阪に設定されましたが、後に福岡、最近は新潟、仙台にも設定されました。この大都市近郊区間内では実際の乗車経路にかかわらず最短距離で運賃が計算されます。と言うことは、隣の駅に向かって遠回りすれば元が取れる、いやお得に旅ができるということになります。もちろん、途中で改札を出ることはできませんので、一般的な旅の定義とは外れるかもしれません。

ただ、列車に乗っていたい、位置ゲーなどでとにかく移動距離を稼ぎたいという目的であれば、十分叶えることはできます。かつては、改札の中にあるのは売店(キヨスク)、立ち食いそば屋さん、各種自動販売機ぐらいで、改札から出ない旅はある意味苦行でした。ですが、今では駅ナカというやつが充実していて、大きな駅であれば食事やお買い物などいろいろ用を足すことができます。便利な時代になったものです。

近年は交通系ICカード(Suicaなど)のエリア拡大により、大都市近郊区間が異常成長を遂げています。ですが、いわゆる大回り乗車は、かつて130円旅行(大阪では120円旅行)と呼ばれていたものが本流であると信じていますので、以下最短きっぷで回れる大回り乗車のモデルコースを紹介したいと思います。大都市近郊区間とは言え、松本(東京近郊)や播州赤穂(大阪近郊)から飛んでくるのは、せいぜい終夜運転チャレンジ(大晦日から元日にかけては、終夜運転の都合により当日有効のきっぷが実質2日間使える、それを利用して普段あり得ない距離を移動すること)ぐらいしかメリットがないと思っていますので。スタート、ゴールはあくまで一例ですので、下記のコースのどこからスタートしてもよいかと思います。

【東京近郊区間】
東京⇒新日本橋
東京~市川塩浜~南船橋~西船橋~千葉~蘇我~安房鴨川~大網~成東~松岸~成田~我孫子~友部~小山~新前橋~高崎~倉賀野~高麗川~大宮~南浦和~新松戸~日暮里~池袋~赤羽~武蔵浦和~府中本町~立川~拝島~八王子~橋本~茅ヶ崎~大船~根岸~横浜~鶴見~浜川崎~尻手~武蔵小杉~品川~代々木~御茶ノ水~神田~秋葉原~錦糸町~新日本橋
これがたぶん最長経路かと思われます。距離は964.3キロ!とても1日では回れまいと思って調べてみると、うむむ、始発から頑張っても1日目は高崎辺り(八高線)で終了、終夜運転を考慮して2日目は高崎発とすると(八高線が終夜運転するとは思えないので)ゴールの新日本橋に到着するのは17時前。一応土休日ダイヤで検証を行った結果ですが、まあ体力が保たないでしょうね。

【大阪近郊区間】
実は、最長経路としては塚口~加島が有名ですが(昔自分でプランニングして後輩にやらせたことはありますが)、あくまで最短きっぷにこだわりたいので、そういうチートはここでは書きません。
新大阪⇒東淀川
新大阪~尼崎~京橋~天王寺~和歌山~高田~桜井~奈良~久宝寺~放出~木津~柘植~草津~米原~近江塩津~山科~東淀川
西のループを捨てるのはもったいない?と思いつつ、これでも556.9キロ。これなら1日で回れるでしょう。最長経路も1日で回れたので。始発はちょっとかわいそうなので、新大阪6時発でシミュレートすると東淀川到着は22時前。関西は比較的新快速などの速達列車が充実してますが、それを台無しにする関西本線(加茂~亀山間)、草津線、そして近江塩津の壁。まあ、現実的なルートではないでしょうか。

【福岡近郊区間】
博多⇒吉塚
博多~原田~桂川~新飯塚~田川後藤寺~城野~西小倉~香椎~長者原~吉塚
え、初乗り170円もするのかよ?それはともかく、淋しいエリアですね。距離は、166.8キロ。博多を7時台に出発すると、吉塚着は14時前。ちょっと遅い昼ご飯の時間ですね。ただし、待ち時間が異常に長い気がします。ちなみに、福岡に関しては大都市近郊区間にありながら廃線になった路線がいくつかあるのです。勝田線、添田線、田川線、糸田線、伊田線、漆生線、上山田線がご存命であったらもう少し長くなったはずなんですけどね。田川線、糸田線、伊田線は線路は残っていますが、もはやJRではありませんので。

【新潟近郊区間】
関屋⇒白山
関屋~柏崎~長岡~新津~新発田~新潟~白山
迷う要素のない簡単なループです。駅間が基本的に長いので最短距離の区間を探す以外に悩むところはないです。距離は220.4キロ。ちょっと長いかな。関屋を7時以降に出ると、白山に着くのは14時前。2周ぐらいできそうだな。

【仙台近郊区間】
榴ヶ岡⇒仙台
榴ヶ岡~石巻~小牛田~新庄~(新幹線不可)~福島~仙台
悩みどころは仙台から小牛田の辺りでしょうか。それ以外はただループ区間を回るだけです。福島~新庄間に運転する特別急行列車(原文ママ)が大都市近郊区間に含まれないので、そこがネックです。距離は397.3キロ。榴ヶ岡を7時台に出発すると、仙台着は20時過ぎ。ただし、途中で陸羽東線の臨時列車快速湯けむり号を利用した場合の時刻なので、その次の列車に乗ると仙台着は23時30分近くに。改札から出られないので温泉でくつろぐなんてこともできません(鳴子温泉駅の足湯は改札外なんですよ)。地味に疲れる旅になりそうですね。

ところで、東京や大阪のルートでは時々乗り換えが複雑なフェーズがあると思います。さて、乗り過ごしてしまったらどうすれば良いのか?諦めて実際の乗車運賃を払わなければいけないのでしょうか?微妙なところですが、とりあえず係員(駅員または乗務員)に乗り過ごしたと言い張りましょう!以下の条文により救済されるはずです。
第291条
旅客(定期乗車券又は普通回数乗車券を使用する旅客を除く。)が、乗車券面に表示された区間外に誤って乗車した場合において、係員がその事実を認定したときは、その乗車券の有効期間内であるときに限って、最近の列車(急行列車を除く。)によって、その誤乗区間について、無賃送還の取扱いをする。
第291条の2
前項の取扱いをする場合の誤乗区間については、別に旅客運賃・料金を収受しない。
通常は普通のきっぷを持っていて、降りる駅(乗換駅含む、以下同じ)を過ぎてしまった場合や、降りる駅に止まらない快速に乗ってしまった場合の救済措置なのですが、たぶん認めてもらえるのではないかと。ただし、Suica利用にこれが適用されるかは微妙なところです(ICカードには振替輸送などの優遇措置はありません)。まあ、大丈夫なのではないかと。

もちろんですが、降りる駅を通り過ぎて、それまでの経路をちゃんと説明できないとその駅までの運賃を請求される可能性もゼロではありません。大回り乗車はJR的には推奨されないし、ちっともありがたい利用法ではないので、こちらも理論武装の必要があると思います。それ故、大都市近郊区間内の路線図を完全に把握する必要があるわけです。念のため、予め経路を計画して問題がないか確認することをお勧めします。では良い旅を!?

大回り乗車の根拠となる規則とは

いわゆる大回り乗車というものがあります。これは大都市近郊区間(東京、大阪、福岡、新潟、仙台)においては、その範囲を出ない限り大回りの経路でも最短区間の運賃で済むというものです。これは大回り乗車という規則があるわけではなく、旅客営業規則の解釈によって成立するものです。

時々、安上がりな旅行としてネットニュースとか何かの記事で取り上げられることがありますが、生半可な知識で挑むと失敗することも多いです。一般的に、短距離(隣駅または近い駅間)のきっぷで、最短経路以外の経路を通っても運賃は最短経路で計算される、ぐらいのことしか説明がないように思われますが、規則上以下のルールを守らなければなりません。これを外れると、実際の乗車経路に沿った運賃を請求されます。

1.大都市近郊区間内の移動であること
2.乗車駅と降車駅は異なること(これは当然ですが)
3.途中の経路が重複しないこと(同一駅を2回以上経由しないこと)

ハッキリ言って鉄道会社(JR)にとって嬉しくない利用法ですので、あまりないとは思いますが駅員によっては説明(乗車経路などについて)を求めてくるかもしれません。自分も昔某駅の駅員に「本来は実際の乗車経路で計算した運賃を支払わなければならないんだ」とか因縁を付けられたこともありますし。ですので、大回りに関する規則を確認しておきたいと思います。本来あるべき乗り方ではないので、もしルールを逸脱した場合はいろいろ言われることも覚悟した方がいいかもしれません。

では、ここから関連の規則を確認していきます。なお、以下は東日本旅客鉄道(JR東日本)の旅客営業規則から引用していますが、他の旅客会社についてもほぼ同じ規則が適用されます。

第67条 旅客運賃・料金は、旅客の実際乗車する経路及び発着の順序によって計算する。
これは基本ですね。

第67条の4 前各項の規定により、旅客運賃・料金を計算する場合で次の各号の1に該当するときは、当該各号に定めるところによって計算する。
(1)計算経路が環状線1周となる場合は、環状線1周となる駅の前後の区間の営業キロ、擬制キロ又は運賃計算キロを打ち切って計算する。
(2)計算経路の一部若しくは全部が復乗となる場合は、折返しとなる駅の前後の区間の営業キロ、擬制キロ又は運賃計算キロを打ち切って計算する。
1周して発駅に戻って来た場合、または経路上で1度通過した駅に再度来た場合は、その時点で回ってきた区間の運賃を計算します。そもそも、発駅から移動しない乗車券なんてあり得ないわけですが。また、途中で経路が重複しても、その時点で経路を切って運賃を計算します。よって、ダブったらアウトです。

第157条の2
大都市近郊区間内相互発着の普通乗車券及び普通回数乗車券(併用となるものを含む。)を所持する旅客は、その区間内においては、その乗車券の券面に表示された経路にかかわらず、同区間内の他の経路を選択して乗車することができる。
第157条の3
前項の場合、普通乗車券を所持する旅客が、他の経路を乗車中に途中駅において下車したときは、区間変更として取り扱う。
大都市近郊区間については前条の第156条第2項に定義されていますが、ここでは省略します。これが、実際の乗車経路にかかわらず最短距離で計算する、の根拠です。もちろん、途中で降りたら乗車駅と降車駅の距離で運賃が計算されますので、その分の運賃が必要になります。

今はSuicaなどの交通系ICカードの利用を想定して、途中経路を定めない方式になっていますが、かつては大都市近郊区間内の経路指定が面倒なので、特例として区間内においては途中経路を問わず、最短経路で運賃を計算する扱いにしたのでしょう。とは言え、そもそもSuicaはあくまでプリペイドカードであって(もともとはストアードフェアのイオカードの拡張版でしたよね)、それで電車に乗れるようにしているだけなので、厳密な意味では乗車券ではないです。この話は長くなりそうなのでここでは書きませんが、ICカードエリアでは途中経路をチェックするよりは、発駅~着駅で処理した方が都合がいいということなのでしょう。乗車券の途中経路をガチでチェックしようとすると、車内検札または中間改札を使わなければなりませんが、ルートが複雑な大都市近郊区間ではあまり現実味がありません。最近の車掌さんは一応ICカードリーダーをお持ちですが、発駅と残額しか分からないので経路の判定まではできません。まさか、東京から品川まで移動するのに大宮を経由する人なんてそんなにいないだろう、もしいたとしてもおまけしてやろう、それが大都市近郊区間における特例になっているのでしょう。

いろいろ書きましたけど、大回り乗車はイレギュラーな利用法である、旅客営業規則の裏をかいて実現できることである、ということを心に留めていただければよいかと思います。各大都市近郊区間内における活用法については、次稿でまとめたいと思います。とにかくセンシティブな扱いですので、自信のない方は都区内パス、休日おでかけパス、関西1デイパスなどのご利用をお勧め致します。

バス利用特典サービス(バス特)の一部終了について

関東圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)のバス事業者では、PASMO、Suica利用時に一定の割合で値引きされるサービスがあります。これはバス利用特典サービス(以下バス特とする)と呼ばれていますが、2021年3月(一部は4月初め)をもって一部のバス事業者でこのサービスを終了するとのアナウンスがありました。どの会社のお知らせを見ても判で押したかのように、ICカードの利用促進のために導入しましたが、一定の目的を果たしたと判断したために終了します、などともっともらしいことを書いています。

ですが、これはもともと共通バスカードという回数券的な意味合いのプリペイドカードにおいて、一定金額を割り引くサービスが元になっています。紙式の回数券は会社ごとのサービスですが、この共通バスカードは購入額に応じて一定金額のプレミアを付加するものでした。3000円券で3360円、5000円券で5850円利用できるというものでしたかね。それがPASMO導入によって廃止され、その代わりの割引サービスとしてバス特が導入されたわけです。

バス共通カード
【バス共通カード5000円券 2枚買ってもおまけは1700円分】

PASMOやSuicaの場合は、初めから値引きとは行きませんが、1000円利用で100円分、2000円利用で200円分(累積)といったバスチケットなるものが付加され、5000円利用で合計850円分のバスチケットが付加される仕組みになっています。ただし、ICカードの場合は、気前よく10000円分使うと1740円(もちろん累積です)もバスチケットが付加されるようになりました。850円×2=1700円なので微々たるおまけでしたが、それがバス会社には苦しかったのでしょうか。

ICカードになってサービスが良くなったかに見えますが、1つのカラクリがあります。プリペイドカードはもちろん無期限ですが、ICカードの利用額は月単位の扱いです。つまり、月が変わると利用額はリセットされ翌月に持ち越すことができません。先月分のバスチケットは持ち越しされますが。そういう意味では、むしろ改悪でもあったのですが、まだこれはマシな方です。

参考までに、今回バス特を廃止する事業者を書いておきます。ニュースではなかなかこういうまとめをしないでしょうから。
・伊豆箱根バス
・江ノ電バス
・小田急バス(小田急シティバス)
・川崎市交通局
・関東バス(東京の方)
・京王バス(京王電鉄バス、京王バス小金井、西東京バス)
・国際興業
・相鉄バス
・西武バス(西武観光バス)
・立川バス
・東武バス(東武バスセントラル、東武バスウエスト、東武バスイースト、東武バス日光)
・朝日自動車(国際十王交通)(埼玉県東部)
・茨城急行自動車
・川越観光自動車
・阪東自動車
・富士急シティバス
・フジエクスプレス
・富士急静岡バス

3/13以下追記しました(時間差発表はやめんかい!)
・東急バス(東急トランセ)
・京浜急行バス
・川崎鶴見臨港バス
・神奈川中央交通(神奈川中央交通東、神奈川中央交通西)
・箱根登山バス
・山梨交通

ちなみに以下の会社は初めからバス特はありませんでした。
・イーグルバス(埼玉県西部)
・神奈中観光(南町田グランベリーパーク駅~相模大野駅)
・神奈中タクシー(E-バス)
・関越交通
・千葉海浜交通
・千葉内陸バス
・ちばフラワーバス
・ちばシティバス
・成田空港交通
・小湊鐵道
・千葉交通
・京成タクシー成田
・東京空港交通
・東洋バス(千葉シーサイドバス)
・日東交通(千葉県南部)
・小田急箱根高速バス
・日立自動車交通(東京都内コミュニティバス)
・富士急バス(富士急湘南バス、富士急モビリティ)
・あすか交通
・西岬観光

関東鉄道バスは頑張ってるのにとか、国際興業が止めるのになんで山梨交通はサービス継続なんだよとか言いたいことは山ほどありますけど、とにかく言い訳が見苦しいです。ICカードの普及のために始めましたが一定の効果があったので廃止しますなんて素人騙しもいいところです。経営が苦しいからもう勘弁してください、と正直に言えばいいのに。だいたい、ICカードの普及云々言うのであれば5年とか10年とかキリのいい期間を設定するでしょう。それが13年なんて中途半端な時期に廃止なんて、最近よくあるコロナ禍を言い訳にした改悪ですよね。利用者が納得すればそれでいいのでしょうか。納得というよりは詭弁によってまんまと騙されている印象しかないんですけどね。

じゃあ、もうICカードのメリットはないのか?いや、ありますよ。消費税増税の関係で関東地区では1円単位の運賃が設定されていますが、現金利用だと10円単位に切り上げられます。といっても、1乗車でせいぜい3~4円得になるぐらいです。だったら、あえて現金で払ってやろうか。ついでに、両替して運賃箱から小銭を回収してやろうか。そういう気分にもなります。これを機にさらに利用者減なんて事態にならないことをうっすら祈るばかりです。

蛇足ですが、付与されたバスチケットについては10年間有効になるようです。てことは、バス特を継続する会社でチケットを貯めて、廃止した会社で利用するという嫌がらせ裏ワザが有効なんですかね?バスチケットは会社固有のものではないので(例えば、都バスでもらったチケットは国際興業で使えます)、この技を使うことになりそうですね。

2021/3/13一部加筆しました。