かつて関東のバス事業者(東京、神奈川、千葉、埼玉)には、バス特(バス利用特典サービス)というものがありました。これは、ICカード乗車券(PASMO、Suica)の利用を促進するため、既存の共通バスカードを廃止し、無期限だった利用額割引を1ヶ月というスパンで区切るという改悪でした。
そのバスカードから見て改悪であるバス特さえも、2021年4月を持って廃止されてしまいました。それ以降は、ICカード乗車券を使ってもプレミアが付くことはなくなりました。ただ、現金利用に比べて1円単位でいくらか安くなるというわずかなメリットは残されました。
ですが、それも多区間料金方式では威力を発揮するものの、東京、横浜といった1円単位の端数が0のエリアでは何の意味もないことが判明しました。東京都区内(都バスエリア)と川崎市内エリアは210円、東京都区内(都バス以外)と横浜市内エリアは220円ですね。210円区間なら小児運賃は105円となり、わずかにメリットが残されますが、220円区間では小児運賃も110円。もはやICカード利用によるお得感はどこかへ消え失せてしまいました。
さらに、最近のバスを見ていると前面に奇妙な横断幕を付けていますね。「のりかえよう、モバイルへ」あのー、寝言は寝てから言ってくれませんかね?ただでさえ、ICカードのメリットがなくなったのに、今度はモバイルSuica、PASMOにしろと。そうですよね、そうすればカードを発行する手間も省けますもんね。ICカードを発行する際にはデポジットという保証金を500円ほど分捕り、カードを返却すると返ってくるらしいのですが、それすら惜しんでBYODをゴリ押しするのか。このバス事業者どもの愚行に自分はかなり怒りを覚えました。そして、決意しました。そうだ、もう現金払いにしよう!
折しも、各金融機関(ゆうちょ銀行までも)が小銭の取扱いに余計な手数料を徴収するようになりました。それもあって、キャッシュレス、ICカード利用促進を進めたいのでしょうが、利用者にメリットが全くないキャッシュレス、引いてはBYOD的なモバイルIC乗車券の押し付け。確かにバス事業者も利用者の減少でお財布は苦しいのでしょうが、それを公言せずあくまでIC乗車券、モバイルIC乗車券をゴリ押しするという不誠実な対応には納得行かないのは誰もが認めるところでしょう。ですので、今後は(既に実行していますが)IC乗車券と現金の差分がない区間では小銭を支払うことにしました。それが彼らの望む世界なのではないでしょうか。もし、本当にIC乗車券、モバイル乗車券を普及させたいのなら、バス特のような制度を維持するべきでしょう。
幸い小銭は、ジュースの自販機などで簡単に補給できるので、わざわざ銀行で高い手数料を払って両替する必要もありません。そういう地道な運動により、バス特を復活させたい。そんな切なる想いを大事にして、今日も運賃箱に小銭を投入するのでした。