アドラー心理学について、珍しく本を買って(いつもなら動画サイトとかまとめサイトで済ませるところですが)真剣に勉強しようとしています。面白い理論(または思想)ではありますが、やっぱりちょっとクセがあるような。
根底にある考え方は、世界は変えられるということです。といっても、革命を起こして世界を変革するとかそんな大げさなものではなく、世界の見方を変えるということです。つまり、主観的な考え方ですね。そして、人は今すぐ幸福になれる。これも主観的な話です。今の世の中を見て、なんとひどい世界だろうと悲観するか、何とか生きられてるからいいかと思うか。
ちょっと話がそれますが、ブータンは幸せの国といわれています。それは国民の幸福度(幸福だと思っている人の割合)が高いからだといわれています。かと言って日本よりも豊かで満たされているかといえばそうでもないようです。治安がよいわけでもない。それでも、多くの国民が今の生活が幸せだ、満足だと思えば、幸福度は高くなるわけです。つまり、幸せって主観なんですよね。そこにヒントがある気がします。アドラー心理学で今すぐ幸せになれると説く人は、みんなが今すぐ億万長者になれる、異性にモテモテになるとかいう意味で幸せになれるといっているわけではないです。
では、何故に人は幸せになれるのか。それに関わるキーワードがあります。自己受容というものです。つまり、今の自分を受け入れるということですね。ビンボーでもモテなくても140km/hのナックルカーブが投げられなくても、自分を受け入れて自分の存在が価値あるものだと思う。もう少し細かく言うと、「自立すること」と「私には能力があるという意識」となるそうです。それを助けるのが他者信頼、そして他者貢献なのです。
ちょっと話が長くなるのを覚悟で書きますけど、他者信頼は文字通り他者を信じること。と言っても、もちろん中にはイヤなやつはいます。自分を認めず、何かとバカにしてきたり、自分の功績を評価しない人。そういうのは無視します(断言)。イヤなやつは無視して、仲良くなれる人を大事にする、その人を中心に考えれば、自分の敵になる人って案外少ないことに気付きます。自分の信頼が置ける人、邪魔をしない人を中心に据えれば、他者信頼は実現できます。他者信頼のためには「社会と調和して暮らせること」、「人々は私の仲間であるという意識」が必要です。
それができたら、次のステップである他者貢献になります。他者から感謝されたり賞賛されなくても、共同体(学校とか職場レベルでよいです)で他者に貢献できること。目に見える効果がなくても、周りの人に「ありがとう、助かるよ」なんて言われなくても、共同体の仲間にプラスになることができれば他者貢献は実現できています。やや自己満足に近いかもしれませんが、実現しているのです(キッパリ)。ちなみに、本の中では例として専業主婦の事が書いてありました。旦那が食器の片付けを手伝ってくれない、子供はとっとと自分の部屋へゲームしに行く、なんで私ばっかり家事をやらないといけないの?と思うより、私は感謝されなくても家族のために貢献できている、そう考えると怒る気持ちはなくなるとか。どうかな?全国の専業主婦が抗議してこないか心配だな。
また、学校や企業の人間関係に悩んでいる人に言いたいことは、共同体をもっと大きな枠組みでとらえようと言うことです。例えば、学校の先生がとても偉そうだ、職場の上司が絶対的な権力を持っている、と自分を取り巻く環境が問題を抱えているとします。しかし、待ってください。学校の先生が威張れるのは学校の中だけ、職場の上司が横暴を働けるのは会社の中だけです。特に社会人になったら、合わない職場なんて辞めてしまえばいいのです。これは自らの体験も含まれますが、会社の経営方針がおかしい、上司の頭がおかしい、正社員なのに給料がコンビニバイトより安い!そういう会社からは抜け出すようにしてきました。退職届を叩きつければ、頭のイカレた上司との関係はそこでおしまいです。
前に、人間関係を縦の関係で見てはいけないという話をしました。そこから派生する考え方は人を褒めてはいけない、叱ってもいけないというものらしいです。じゃあ、どうするんだよ?という疑問は湧いてくると思います。そういう時は感謝の気持ちを述べます。つまり、ありがとうとかそういう言葉ですね。ありがとうという言葉は対等であり、そこに対人関係の順列を作るものではない(つまり横の関係)。それがアドラー心理学の主張です。それで相手に伝わるのか?もう1つアドラー心理学のキーワードがあります。それは、勇気づけというものです。感謝の言葉を述べ、相手にあなたは共同体に貢献している(他者貢献できている)ということを認識させるのです。それが生きる勇気につながっていく、そういうことらしいです。
自己受容、他者信頼、他者貢献を順番に書きましたけど、そういう順番に並んでいるのではなく、これらはお互いにつながったものです。自分の能力を意識し、周囲の人を敵ではなく仲間だと思う、そうすればこの世界に自分の居場所はできる(共同体感覚)、そして仲間のためにできることをして役に立つ(他者貢献)ということになります。
もう1つ、アドラー心理学で出てくる言葉に「人生の嘘」というのがあります。これは、何かと理由を付けて人生のタスクから回避することだそうです。ちょっと話が前後してしまいましたが、フロイトの提唱する説は原因論、つまり過去に原因があって、それが今の自分を形成しているという考え方です。アドラーはそれにまともに反対しています。アドラーの説は目的論と言われています。過去は関係なくはないが、それが原因ではない。過去のことに対する意味付けによって現在は変わる。自分が不幸なのは過去に問題があったからではなく、それを言い訳にして変わらない決意をした、(それは変わることを恐れているから変わらないという目的による)からだと主張しています。
自分が不幸なのは、子供の頃の家庭が貧しかったからだ、両親が小さい時に離婚したからだ、就活したのが就職氷河期だったからだ、と過去に原因を求めて、現状を納得させる人もいる。じゃあ、同じ境遇の人はみんな同じように不幸なのか?同じように悲惨な人生を送っているのか?そうではないはずです。過去の出来事が原因となるのではなく、そこにどんな意味付けをするかで現在は変わるというのがアドラーの主張です。過去に囚われずに幸せを目指すために必要なのが勇気なのです。現状を変えることを恐れず、幸福に向かって進むための勇気です。
長くなってしまいましたが、最後にNさんの迷言を一つ。「アドラーは承認を否定している。だから私は君を承認しない。」などと意味不明な発言をされて、リアクションに困ったことがあります。やっぱり理解してな(ry ちゃんと書いておくと、アドラーは承認欲求を否定しているのです。承認とは他人がするものだから、それに囚われると他人の基準に合わせることになり、他人の人生を生きることになる。つまり、他人の意見に振り回され、自分を失うということになりかねない。基準はあくまで他人ではなく自分であり、理想の自分が目標です。ピアノが上手に弾けなくてもいい、100mを9秒台で走らなくてもいい、日本の元号を大化から令和まで丸暗記しなくてもいい。自分なりの目標、理想があるはずです。それを目指せということなんですが。
一応読み終わったので、次回はまとめを書こうと思います。まとめにならないかもしれませんけど。ここまでお付き合いいただきありがとうございます。