前の現場の惨状については、お伝えした通りですが、実はもう一つの懸念事項に悩まされていたことも、一つの事実です。それは何かというと、ほぼ同時期に入った若手のこと。そうです、自分がベテランとしてしっかり育成しなければと思っていたあの若手のことです。
年齢は20代半ば。いわゆるゆとり世代ってやつです。別に自分はゆとり世代がどうとかそんなに気にするタイプではないのですが、彼は個人的に問題のあるやつでした。経験はと言うと、前職が約1年ほどで機器の設定作業がメインだったみたいです。つまり、手順書通りにやればそれほど難しい作業ではなかったようです。ただ、その時に休みがちだったり遅刻が多かったりで、現場でも問題となりこちらへ流れてきたようでした。
最初の印象は、おとなしくて真面目そうな好青年(まだ死語じゃないですよね?)、そんなに問題があるようには見えなかったのですが。ただ、一緒に仕事をして会話する中で、違和感が日に日に募っていくのを感じました。勤怠は特に問題はありませんでした。最後の方は体調を崩しがちでしたが。ただ、前職で遅刻が多かったり休んだりした理由は、給料が安すぎて生活できないので会社に黙って副業(深夜バイト)をしていたからだったようです。そういうところは、まず会社に相談すべきだと思うのですが。それも常識を疑う一面ではあります。
それと、社会人としてというより一人の大人としての自覚に欠ける面もありました。普通先輩の話って、多少忙しくても聞くものでしょう。自分たちはそれが当たり前だと思っていましたが。しかし、彼はたいていうっとうしそうなリアクションを見せました。スキルアップのために勉強しろと言っても、表面的な返事はいいものの勉強する様子はありませんでした。また、それほど経験がある、仕事ができるわけでもないのに、ともすれば仕切ろうとするところが見られました。年齢や経験が近くて対等の立場なら分かるんですが、スキルも経験もない若造に勝手な振る舞いをされるのは気分のいいものではありません。しかも、その点を指摘すると逆ギレするというさらに厄介な面も見せていました。
肝心の業務はと言うと、経験値の低さは明らかでした。ですが、現場の作業の流れとして、基本的な手順書がありそれに沿って作業すれば何とかなるという世界でした。それが悪かったのか、どうやら彼は手順書に書いてあることができるだけで仕事ができると錯覚していたようです。手順書というものは、だいたいにおいてその通りに作業すれば誰でもできるように作ってあるものです。それができたからと言って、しょせん現場の作業員のレベルを超えるものではありません。さらには、手順書に書いてない想定外の事象が起きると、たちまちパニックを引き起こしておかしくなりました。日頃随分と強気な(生意気な)言動を見せる割に、とんでもないお豆腐メンタルだったとは。。。この辺りでさすがにサジを投げかけていましたが。
それでも、自分や周りの技術者で彼を一人前のエンジニアに育成しなければいけない、そう思っていました。ところが、彼には(我々が期待するほどの)仕事への情熱もなかったみたいです。成長スピードは人それぞれです。でもやる気があればきっといつかは一人前になれる。そう信じて我々は教育をするわけです。しかし、ある時この業界を目指した理由とか仕事に対する思いを尋ねてみました。すると、本当は別の主力の業務に就くところだったが適性検査で落ちてしまった、それでこちらの業界に入ってきた、そして明言はしなかったものの仕方なくやってるんだという気持ちは伝わってきました。自分としては、きっかけはどうあれこの世界で頑張っていきます!という言葉を期待していたのですが、その期待はあっさり裏切られました。
こうなってはもはや我々の手の届くところには彼はいないんだなと認識せざるを得ません。自分のような経験者が離れていき、現場にはもはや彼に教えられる人間はいない、彼は自分は仕事ができると過信しているけれどまた想定外の事象で体調を崩すかパニックになる。その姿が容易に想像されますが、残念だけどもう我々は君を助けることはできないよ。今の現場では絶対に放置プレイになるから、まだ教育(OJT)できそうな現場に飛ばすみたいですけど、長くは保たんだろうな。担当営業は1年ぐらいはやってもらわないとと言いましたが、自分の予想では1ヶ月保てばいい方だと思っています。
前述の話に戻りますけど、彼のスキルの低さ、経験のなさから問題が起きて、あのチームリーダーがやべえ、あいつを呼び戻せ!って叫ぶ姿を想像するのも楽しいですが、そういう事態になっても助けられない(正確には助ける気がない)し、正直言って彼には救いの手をさしのべる価値がないと判断しました。どんな人にも向き不向きはあります、だからこの業界にこだわらず広い視野で適職を探してみたらと思います。たぶん、給料はだいぶ下がる(今の水準から上がることはない)でしょうけど。
前職の最終日、早く帰れたので昔の職場の人と飲んでいた話をしましたが、その人も20代半ばです。上記の彼と同世代ですが、彼ほど不遜で傲慢で身の程知らずではないです。やっぱり彼が特殊なんだな、それが確認できただけでもよかったと思いました。